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膨れる組織、薄くなる責任 震災で相次ぎ対策本部

 東日本大震災の発生から20日。大地震、大津波、東京電力福島第1原子力発電所事故と日々広がる被害を後追いするかのように、菅直人首相がいくつもの「対策本部」を設置している。東電への不信感もあり、自らのブレーンとしての専門家起用にも熱心だ。しかし、これまで目立つのは指揮命令系統の混乱ばかりで、災害対応の現場からは悲鳴が上がる。組織肥大化には、責任が薄れる弊害もある。

政府組織
 「ラインの多元化を危機の時にやっては駄目です。戦時内閣とか震災内閣の例で分かるように、人を増やすのではなく、体制を縮めていくのが危機対応です」

 27日昼。日曜の首相官邸執務室で40分間にわたって2人の政治学者の声が響いた。山口二郎、遠藤乾の両北海道大教授で「政治主導」「統治機構」の専門家だ。野党時代からの首相のブレーンとして知られる山口氏のもとには、11日の大震災発生後、「現状の体制を放っておくと大変だ」との声が多数届いており、この日の直談判となった。

 2人の意見に耳を傾けた首相は「外からみるとラインが複数あるように見えているのか……」とつぶやいたという。

■指示バラバラ 「対応遅れる」

 震災や原発の被害が広がるにつれ、政府は首相を本部長とする緊急災害対策本部をはじめ、原子力災害対策本部、被災者生活支援特別対策本部など対策本部や会議を次々と立ち上げた。しかし、現場から聞こえてくるのは批判や不満が圧倒的に多い。

 「わけ分からん」。今月下旬、官邸で開いたある対策本部の会合直後、退席した経済官庁のトップは記者団を前に不快感をあらわにした。官僚の声の多くは「重複する組織それぞれに政治家がいて、全員に報告や根回しが必要。しかも、指示や注文はバラバラ。対応は遅れる一方だ」(経済官庁)という危機管理体制にかかわるものだ。

 原発の冷却のための放水作業では不可思議な対応も垣間見えた。「機動隊の放水車を出せ」。政府内で真っ先に出動を求められたのは、なぜか警察庁だった。放水のプロである消防庁は自衛隊よりもあと。消防庁を所管する総務省からは「機動隊案はある閣僚の思いつきと聞いた。事務次官会議などで全省庁の資源や政策を持ち寄れば、まず消防車の出動が先だろう」と疑問の声が上がる。

 「戦争状態と同じだ。救援物資の配布は自衛隊じゃないと駄目だ」。国民新党の亀井静香代表が首相に強く迫ったのは震災発生2日後の13日だった。

 だが首相の指示は「被災地に物資が届かない」との批判がわき起こった後の15日の緊急災害対策本部。「防災相が自衛隊を指揮するのか、防衛相に防災相が『やってほしい』と伝えるのか、そのやり方は両閣僚にお任せします」という「指示」だった。関係閣僚はその後、亀井氏に「菅はのろい」と愚痴られた。

■官僚の活用で 仙谷氏存在感

 批判が渦巻く中で存在感を高め始めているのは、新任の仙谷由人官房副長官だ。仙谷氏は就任早々の20日、9府省庁の次官らを官邸に集めて協議した。「目詰まりを起こしているところがあれば、こちらで責任を持つから(報告を)上げてくれということだ」と、官僚を活用して政府の機能不全を修復する考えを記者団に説明した。

 仙谷氏は各省副大臣が集まる副大臣会議について周囲に「事務次官会議の方がマシだ」と漏らしており、22日には事務次官らを一堂に集めた被災者生活支援各府省連絡会議を新設。民主党政権で廃止した事務次官会議を事実上、復活させた。

 首相周辺の官僚は「霞が関全体を見る政治になってきた」と話す。鳩山前政権で官邸にいた民主党議員からも「官僚はすべて仙谷氏を通して動き始めた」と「目詰まり解消」を評価する。

 首相も「仙谷氏のところはうまく回っている」と周囲には漏らすが、官僚不信は相変わらず根深い。

 「なるべく本来の役所の行政のラインを活用すべきです。役人にちゃんと役割を与えて仕事をさせることが必要です」。27日に首相と会った2人の北大教授はこう進言した。だが首相の答えは「本当はその種の政治任用のポストがもっと必要なんだよな」だった。

 相次ぐ対策本部・会議の設置に加え、首相補佐官の交代や閣僚の増員、復興庁の創設――。官邸から湧き出てくるアイデアは、こうした首相の一貫した思いに裏打ちされたものだろう。

 「首相は『政治主導』を誤解しているのではないか」。大震災や原発事故後に首相と話した人たちからは、異口同音にこうした疑念の声が上がっている。

2011/3/31 12:00 日本経済新聞 電子版

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